土壁暖房トイレの家、遂に現る!

今日は愛媛県松山市の住宅の施工現場にお邪魔して参りました。荒壁が乾いた状態、それは見とれる程の美しさでした。実は2011年に奈良県橿原市で設計した土壁のモデル住宅”木灯館”以来、なんと4年ぶりに土壁の建築に携わることが出来ました。木灯館は今回の物件と同様、壁の中の木小舞に土壁を塗り、木質断熱材と土壁が共存しながらも、気密シートを使用しない在来工法の仕様でした。屋根も同じく木質繊維断熱、窓はドレーキップを中心としたドイツ製の木製サッシ(ガラスはトリプルとペアの混在)という所まで共通しています(薪ストーブを暖房器具としているところも!)。

 

木灯館は、3.11の震災直後の資材が乏しい中での着工であっただけでなく、上棟後に発注主である十津川村を集中豪雨が襲い、村と現場は通信不可能となるなど、工期の遅れが生じました。それでも年度末に完工せざるを得ず、突貫工事の中で丁寧な気密施工を行う事が出来ませんでした。その結果、C値は0.8cm2/m2にとどまりました。0.8cm2/m2の気密性能が、土壁の家としていかに驚異的であるかという事は、専門家の方であれば直ぐにお分かりだと思います。しかし、パッシブハウス認定を取得するには、不十分でした。

あれからあっという間に4年が経過しました。今回の大間の家は、パッシブハウス・ジャパンの賛助会員さんでもかなり実績のある工務店さんが施工されるため、C値がどこまで改善できるのか、私はひそかに期待しつつ、正直ドキドキしていました。

 

そして先日出た測定値は0.15cm2/m2という、とんでもなく良い値でした。木灯館で目標のC値が出せなかったのは、私の設計仕様が原因なのではないか?という声も上がっていたため、今回結果を出してくださった工務店に心から感謝です!

 

そんなマニアックな裏話は別としても、木製の高性能窓、土壁、そして木質断熱材に囲まれた今日の現場はとても居心地の良い空間でした。日本の伝統工法とパッシブハウスの融合も近い将来実現できそうな、そんな予感がした一日でした。

さて、今回のワクワクする仕掛けの一つとして、土壁暖房をご紹介します!

大間の家では、リビングのアイランドキッチンに、イタリア製の薪調理器がビルトインされるのですが、この薪調理器は温水との熱交換回路を持っているため、給湯や温水暖房を賄う事が出来ます。そこで、この温水を1Fの洗面脱衣室とトイレ、及び北側に配置されたご両親の寝室の輻射暖房として使用する事になりました。しかしトイレと寝室は、床が無垢の杉材のため、放熱面としては余り効率が良くないだけでなく、ベッドや便器などが置かれ放熱面としてフリーな床の面積は限られています。そこで、隣り合うこの二つの部屋を隔てる内壁に温水のパイピングを施し、それを土壁の中に埋めることにしました。右側の写真がご両親の寝室側から見た壁、左側の写真がトイレから見た壁です。トイレの方が圧倒的に床面積が小さいため、トイレ側の土壁には木質繊維の断熱を施し、放熱面を狭めているのです!なんてシンプルな出力制御方法・・・。

 

トイレに座っていても薪ストーブの恩恵が受けられる家なんて素敵ですね。ただ、誤解の無いように補足しますが、仮にこの土壁暖房が無かったとしても、南面のリビングとこれらの部屋の温度差は1~2度しか無いでしょう。もちろんヒートショックとは無縁な温熱環境なので、贅沢品と言いますか、土壁に投資をされた方だけの醍醐味というか・・。

 

皆さんも電気生炊きの暖房便座から脱却して、

バイオマス燃料による土壁暖房トイレにシフトしませんか?

今日は本当に良いお天気で、帰りの便からは雪化粧の富士山も楽しめました。この地球という美しい惑星を、私たちの子孫が将来見切りをつけて宇宙を放浪するような事が無いよう、私たちのライフスタイルそのもののシフトが求められていると感じます。でもたまにはポップコーン片手に映画とか観たい!

森みわ共著「あたらしい家づくりの教科書」

2016年9月1日発売

アマゾンで絶賛発売中!

東日本大震災を経て、省エネな暮らしの大切さに多くの方が気付かれました。2012年発売の「図解エコハウス」。これまで沢山のお施主さんがこの本を握りしめて設計相談に来られました。温熱を勉強したい実務者の方も是非!

パッシブハウス・ジャパン
東北芸術工科大学