4月22-23日で開催された第20回国際パッシブハウス・カンファレンスにて、なんとファクター5の著者である、ヴァイツゼッカー(Ernst Ulrich von Weizsaecker)博士と直接お話する機会がありました。今年77歳になられる博士は、昨年末に休暇中に骨折されたとの事で、会場には松葉づえを付いてお越しになられました。しかし頭の方は全く衰えること無く、カンファレンス最終日のパネルディスカッションでは、ジャーナリストのフランツ・アルト(Franz Alt)氏の楽観的なコメントにはお構いなしで、鋭い指摘を連発されました。フォルクスワーゲン社による燃費偽装を例にあげ、資本主義の行きつく先はお金のためなら人を騙すという、倫理観の欠落した社会であると断言され、世界を戦争へと引きずり込もうとしている勢力に対して、怒りをあらわにされていました。
私は今回、ヴァイツゼッカー博士がカンファレンスに招待されている事を知り、ファクター5の日本語訳を持参していました。このファクター5の中でパッシブハウスが建築における高効率の道であると博士が述べていたことがきっかけで、当時日本語訳に着手された吉村さんが私に会いに鎌倉まで来てくださった事をお話すると、大変喜んでくださり、メッセージを下さいました(あれ、肝心な名前が無い!?)。
他にも博士は、今後アフリカの人口が爆発的に増えることが予想される中、世界中で水と土壌は汚染され、食糧の収穫量はこれまでよりも減ることを懸念され、各地で広がる貧困が社会の安定を乱すだろうと発言されました。
これに対してファイスト博士は、貧困社会では少女達の教育こそが、貧困脱却の鍵を握っており、これを急速に進めて行かなくてはいけない、資本主義社会のリーダー達は政治家も含め、もっと倫理観を持たなければいけないとコメントされました。
一方、ジャーナリストのフランツ・アルト氏は、これまで200年の間に、どれだけ世界が平和になったかを、10万人中何人が暴力によって不当に命を奪われたかという尺度で説明されました。その数字は過去200年で200分の1に圧縮されており、仮に先日のパリのテロで130人の命が奪われたとしても(それはもちろん悲惨な出来事であるけれども)、それがきっかけで第三次世界大戦に突入するなど、勘違いも甚だしいと牽制されました。
そんな訳で、カンファレンスを締めくくるパネルディスカッションにおいて、
パッシブハウスがどうのという議論は全く無く(笑)、皆世界平和のためにそれぞれのプロフェッションで全力で情報発信をしていく事に関して、同意を得た、そんな場となりました。
改めて、ヨーロッパ人の強い責任感と行動力に、脱帽です。
コメントをお書きください