苦戦した気密測定

綱島の現場が断熱気密施工が完了したので、気密測定を実施した。

弊社の物件は、パッシブハウス物件でない物件もすべて「漏気回数0.6回/h以下」のパッシブハウスの気密性能を自社基準としており、断熱気密施工時、竣工時の2回測定を実施します。

 

漏気回数とは、日本で広く使われているC値(隙間相当面積)とは異なり、国際的な基準のACH(50Pa時の差圧時の漏気回数)の基準で求められる気密性能の指標のことで、C値が9.8Paの差圧での隙間相当面積を図る基準なのに対して、50Paの差圧をかけた時の空気の漏れに対する値になります。

また、数値の分母となる建物の気積についても異なり、C値は、柱芯で囲われた面積×天井高(正確にはもう少し複雑)で求められる気積なのに対して、漏気回数の場合は、有効気積ということで、気密ラインの内側で囲われた気積を計算して求めます。

さらに、比較的有利にでる減圧法ではなく、減圧法と加圧法の2つの測定方法の平均値の値で測定します。

 

さて、綱島の物件での気密測定ですが、今回は初めて3日間にわたって測定を行った程、今までで最も苦労した気密測定になりました。

弊社の最近の案件は、屋根は気密シートを使いますが、外壁は、PJパネル(ネオマフォーム+ハイベストウッド)の合板面で気密を取っており、気密シートを使っていません。そのかわり合板の継ぎ目は徹底的に気密テープで処理。

今回の案件は、オーバーハングの床があるので、上棟時に先貼り気密シートをオーバーハング床に取り付け、外壁からの漏気対策を行っています。

 

気密処理には自信がありましたが、測定1日目は、通常の気密の弱点となる開口部廻りや、設備の貫通部を徹底的に気密処理をしましたが、数値のいいはずの減圧法ですら0.6回/hを下回りません。日が暮れるまで窓回りや合板の継ぎ目、設備配管をウレタンや気密テープで徹底的にふさぎましたが、その日は断念しました。

 

測定2日目は、再度気密処理を見直して臨みます。幸先よく減圧法では0.6回/h以下になりましたが、加圧法での数値が、0.9回/hと大きく外れ、またも日が暮れるまで気密処理を見直すことに。日が暮れる直前に、内部に圧力をかけたときに屋根の気密シートが変形していたので、屋根回りを確認したところ、気密シートを抑えている野縁の釘の位置でわずかに漏気していることに気づきました。

 

測定3日目までに、屋根回りの野縁の釘や野縁とシートの継ぎ目を徹底的に気密処理をし、3度目の正直で測定に望み、減圧法0.51回/h、加圧法0.48回/hの高性能な気密性能を確保することに成功。

ご協力いただいた、工務店の現場監督、大工さんと喜びを分かち合いました。

 

今回の案件の屋根は登梁形式ではなく、垂木形式だったので、屋根の気密シートの切り欠きが多く、屋根と外壁部分の気密施工の難しさを再認識させられた事例でした。この経験を生かして、次の物件でも気密性能を確保していきたいと思います。

 

性能はクリアしましたが、まだまだ施工は続きます。

 

杉浦

 

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パッシブハウス・ジャパン
東北芸術工科大学