土壁暖房回路が始動しました!

軽井沢は最低気温が氷点下の日が続いています。先週末の積雪の名残はもう無くなりそうですが、明け方はこんな景色です。さて、師走の大忙しの時期に、やっとこさエコモの三原さんと千葉さんを捕まえることが出来(笑)、遂に土壁暖房回路の試運転が出来る日がやってきました。

 

こちらの土壁暖房パネル、土を焼かずに高圧でプレスしたもの。ドイツのメーカーさんから試験的に1パレット分出荷して頂きました。建物の外皮性能がパッシブハウスに向かっていく過程で、エアコン式の空調機でも不快感は解消されていくので、床からの輻射暖房の重要性も薄れていく訳ですが、追分の家のように、バイオマスや太陽熱由来の温水があるケースで、「ちょこっと輻射暖房」の導入で冬場の夜間のヒートポンプ稼働時間を更に切り詰められる可能性も視野に入れての今回のトライアルです。追分の家では1階の北側に面した和室と、2階の脱衣室に土壁パネルを配置しました。1階の和室は居室の中で一番日射取得が少なく、ゲストルームとして締め切って使用するケースがあるため、そして2階の脱衣室は服を脱ぐ場所且つ一種換気の排気経路にあるため、少し体感温度を上げられる手段があると快適性がぐっと上がるはずですね。

ヨーロッパでは壁だけでなく天井にも貼って冷水を流すケースもあるのですが、日本の場合は暖房用として割り切った方が良さそうです。ただ、厚さ25mmにして湿度に対する吸放出性能がおびたたしく、日本の伝統的な土壁同様、夏場には調湿機能を発揮します。

 

 試運転に先立ち、前日の夜にペレットストーブを制御する温水出力温度を、70度から78度に変更し、78度に向かっていく際の燃焼パワーを3から2へ落とし、出来るだけ高温水が貯湯タンク内に貯まるように変更をしてみました。こちらはスマホのアプリの画面です。運転状況の確認や、タイマー運転の設定などもアプリから遠隔操作可能です。

今朝はタンク上部の温度が68度の状態でしたが、タンク下部の温度は17度で低め。その後日中に太陽熱温水器が作動してタンク下部も40度まで温度が上昇しました。

 

その後土壁暖房回路をONにしたところ、あっという間に墨漆喰の壁に架橋ポリ配管の形が浮かび上がりました(写真右はFLIRの熱画像)。やはり床暖房と比べると放熱効率が良いようです。フローリング材の熱伝導率は0.13~0.16W/mKですが、漆喰壁はおそらくその4倍以上の熱伝導率です。温水温度50度であっという間に壁の表面温度が35度に達したので、メーカー推奨の40度まで温水温度を落としました。

 

 

土壁の放熱回路は全く問題無し、ペレットストーブの運転も全く問題無しなのですが、

300Lのストレージタンク内の温度の層がかなりはっきりしているようで、暖房回路を長時間運転するためにはペレットストーブや太陽熱温水器からの熱をタンクのどの高さに放熱させるかが肝であることが良く判った1日でした。とはいえ、物件ごとにストレージタンクをカスタマイズする手法こそ、私がヨーロッパで見てきた設計手法なので、これからのチューニングのプロセスを楽しみたいと思います。「やっぱりこの家はサグラダファミリアだな」と三原さんに突っ込まれてしまいましたが、未完ではありません。あくまでもチューニングです!

 

ちなみに本物のサグラダファミリアは2026年に遂に竣工するそうです(笑)。

こちらは2階脱衣室の土壁暖房パネルの施工の様子です。通常の架橋ポリよりも膨張率の低いものを使う必要があり、国内では見つからなかったので、土壁パネルと一緒に赤い配管もドイツから輸入しています。今回は密閉回路なので酸素を通さない配管となっていますが、日本式の半密閉回路でも問題無く動くようなら採用のハードルが下がりそうですね。

写真右は配管後、砂漆喰を施工した状態。この後中塗りにファイバーメッシュを伏せ込み、墨漆喰仕上げとなります。温水配管の位置がサーモカメラできちんと確認出来るようになったので、ようやっとタオルバーを取り付けることが出来ます!

ところで先日南西を向いた寝室で目覚めた際、部屋の天井に写真のような光が差し込みました。朝日は東から登ってくるのにどうして西側の部屋にこんなに強い光が?と一瞬意味がわからなかったのですが。おそらく南東のコーナーガラスから入射した朝日が、南西のコーナーガラスに反射して、それが更に室内のガラス壁を透過して寝室に達したのでしょう。流石にそこまでは設計段階で予測してませんでしたね(笑)。

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パッシブハウス・ジャパン
東北芸術工科大学