プロジェクト概要
建設地 : 富山県黒部市
敷地面積 : 328.27m2(99.47坪)
延床面積 : 139.11m2(42.15坪)
工法・構造 : 木造2階建て
竣工年月 : 2015年11月
設計 : KEY ARCHITECTS
施工 : カネタ建設
Passive House Data Base ID :4640
富山県黒部市で建設中のモデルハウスです。北陸は冬季の日射が少なく、パッシブデザインには向かないというイメージが付きまといますが、近年の国産のサッシの性能向上によって、北陸の冬でも南面の窓から太陽エネルギーを取得する事が出来るようになりました。今回は豪雪地での掃き出しの大開口を実現するために、スキップフロアを採用。南面のリビングを高基礎にしています。竣工後はしばらく一般公開される予定ですので、お楽しみに・・・。
2017年
11月
29日
水
黒部では久々の快晴の中、早いもので竣工から2年が経ったということで
関係者一同集まりまして点検をしてまいりました。
多少の補修、メンテナンスはありましたが、基本的にはカネタ建設様の素晴らしい施工と施主関係者の皆様方に大事に使っていただいているおかげで、2年経った今でも内外共にとても綺麗な状態でした。やはり関係者の皆が良いモノ作りに関わっているという自負を持てるようなプロジェクトであることが、様々な良い影響を及ぼしているのではないかと思いました。
点検に集まった関係者の皆様はパッシブハウスの良さを体感し、一緒にその良さを広めるために歩ませていただいている方々です。間もなくモデルハウスとしての役目を終えようとしているようですが、皆様お疲れ様でした。
まだ見ていらっしゃらなくて、これから見たいと思っている方はお早めに!
(青山)
2015年
11月
21日
土
北陸なのに冬の日射を貪欲に取りに行く家、かなり思い切った南面大開口やらせて頂きました(長期優良住宅仕様)。お陰様で先日の国際パッシブハウスデーにも間に合うことが出来、当日は沢山の方々に見学して頂くことが出来ました。今回はモデルハウスという事で、家具付きの竣工写真です。私の大好きな鎌田泰二さんの照明器具も間に合いました。まずは外観写真から。
外壁は杉板+ウッドロングエコ(1F北面)と長尺板金仕上げ、基礎の立ち上がり部分は外断熱施工のため、パツモル太郎という左官材で仕上げています。開口部はYKK APの樹脂窓APW430がメインです。丁度紅葉が綺麗な季節に撮影を行う事が出来、借景がかなり効果的(笑)。外皮が強い、すなわち室内の輻射が安定している、したがって部屋ごとや上下階の温度ムラがほとんど無い、結果として省エネのために締め切って暮らす必要もない。だから夏も風通しが良い間取りになる。ということで、どこまでも空間が繋がっていくようなプランとなりました。しばらくはモデルハウスとしての運用となりますが、将来的にこの家に住んでくださるご家族が、家の中野いろんなところに居心地の良い居場所を見つけて下さったら本望です。
内部は無垢のフローリング(タモまたは杉浮造り)と珪藻土クロスの仕上げとしました。水回りの天井はレッドシダー、リビング&ダイニングは杉の板目にオスモの白ふき取りで仕上げています。杉の浮造りは私の大好きな床材。素足で歩いてもとても気持ちが良いため、このモデルハウスはなんとスリッパ無しでの運営となります。タイル、広葉樹、針葉樹浮造りの3つの床材の違いを、是非足の裏で体感してみてください。同じ杉の柾目材は、リビングや主寝室の家具にも使われていますが、地元の家具屋さんが丁寧に製作して下さいました。見学会ではその他にもバイオエタノール・ストーブの炎にも皆さんの関心が集まりました(下記は先日の見学会の様子)。
そして異例の速さで降りたパッシブハウス認定!今回はヒートブリッジの解析などキーアーキテクツで事前に行ったため、スムーズな審査が可能となりました。
現在も国内の他の3物件(2012年竣工)の審査が行われており、こちらが完了すれば認定待ち物件は7件程まで減少する予定です・・・。
2015年
8月
21日
金
つかの間のお盆休みが終わり、通常業務に戻ったのはまるで昨日の事のようですが・・。
本日はキーアーキテクツ設計の北陸のモデルハウスにて、気密測定に立ち会いました。
なんと、施工店手配で気密測定を担当された業者さんは、2年前にパッシブハウス・ジャパンの省エネ建築診断士セミナーを成績上位で合格されていたとのこと!
今回全く別のご縁でまたお会いできた事に正直小さな感動を覚えました・・・。
そして気密測定が始まります。
通常日本の住宅では気密性能をC値(隙間相当面積、単位はcm2/m2)
という単位で表しますが、大陸ヨーロッパ式ですと、
50パスカル加圧・減圧時の漏気回数(回/h)で性能を表示します。
ですので日本国内でもパッシブハウス・認定を狙う場合などは、この試験方法で漏気回数0.6回/h以下を証明しなければならないのですが、
今回は加圧法、減圧法共に0.38回/hという素晴らしい数字を出すことが出来ました!
実はこの気密性能、キーアーキテクツ設計物件の最高記録ではありません。
2009年に完成した鎌倉パッシブハウスでは、漏気回数0.1回/h、C値にして0.05cm2/m2という数値を出しています。この時の建物の構造は気密が取りやすいと言われている2x6、外壁と天井には気密シートを施工し、
ドレーキップの輸入木製サッシを使用していました。
一方、今回の北陸のモデルハウスは、一般的な軸組工法であり、外壁の気密シートがありません。窓も輸入品ではなく、国内の大手サッシメーカーの樹脂窓を使っています
(引き違い窓は今回ありませんでした)。
そのような状態で、地場の工務店さんによる丁寧な施工で、
0.38回/h(C値にして0.15cm2/m2) が出せたことには、
大きな意義があると思います。
建物の気密性能は建物のエネルギー効率や換気の能力に大きく影響する
とても大事な要素。
にも拘わらず、国の省エネ基準には、建物の気密性能に関する規定がありません。
したがって、大手ハウスメーカーで家を建てても、C値が5.0cm2/m2なんて事が
あり得る状況の中、未来の建て主の皆さんは、
工務店やハウスメーカーとの工事契約を決める前に、
必ず建物の気密性能に関するポリシーを確認するようにしてください!
一般の方でも、3~5万円の出費で気密測定を依頼する事が出来ますので、
施主手配で検査を行う覚悟があっても良いのではと思いますよ!
2015年
8月
06日
木
去る8月6日、富山県黒部市にて、キーアーキテクツ設計のモデル住宅の構造見学会を行いました。とても暑い夏日となりましたが、北陸エリアの実務者の方を中心とした、大変勉強熱心な皆様にお集まりいただきました。開口部に国内最高スペックの樹脂窓が取り付けられた物件は現在セルロースファイバーによる外断熱施工のために外壁下地をふかしているところです。この日までに屋根のセルロースファイバーブローイングが完了するハズだったのですが、行程の変更により無断熱状態で見学会開催となりました・・・。
樹脂窓は打合せ通りの位置と方法で躯体に収められていました。が、室内から玄関ドアの下の部分を見て私は悲鳴を上げそうになりました。なんじゃこのヒートブリッジは!!!
実は施工店さんが見学会の時に皆さんが出入りし易いようにとの配慮から昨夜モルタルで溝を埋めてくださったところだそうで、モルタルの乾燥過程で放熱していたのでした。ああびっくりした・・。
外壁に関しては、工場でパネル化されたネオマフォーム80mmが躯体に隙間なく充填されているため、現時点でかなり高い断熱性能を発揮しています。一方、灼熱の屋根にはブローイングの際に通気層を確保するための卵パックのようなシート(正式名称は日本住環境のルーフライナー)が収められていますが、そのシートが屋根合板に接触しているところだけ異常に高温になっているのが、サーモグラフィー画像でお分かり頂けます。急きょエアコンを設置していただき、窓を閉め切って見学会に挑むことになりましたが・・。
関係者の皆様のご協力の元、見学会の準備が整いました。キーアーキテクツからは図面や燃費計算結果(うちのイケメン新人の杉浦が社内で唯一省エネ建築診断士の資格を有するので、今回は彼の名前を入れてみました!)、施工写真のパネル展示、そして50分の1模型(自動車メーカーのエンジニアだったはずが何故か現在はプロのモデラーとして生計を立てている私の父に外注)を持参。お施主様からはパイプ椅子を貸出し頂いて、施工店の監督さんにはサッシおさまりを検討する際に製作した壁の原寸大模型をご用意頂きました。この時点ではエアコンがそこそこ効いており、室内は涼しい環境だったのですが・・・。
施工を担当されているカネタ建設・猪又社長のあいさつから始まり、賞味45分のミニセミナー&現場監督さんとのトークセッションでしたが、内部発熱量は3000Wを超え、室温は上がる上がる・・。皆さん本当に申し訳ありませんでした。是非竣工した暁にはもう一度、今度はもう少しゆっくりとお話させて頂きたいと思いますので、11月の竣工までしばしお待ちください!!!
こちらは今回の外壁構成と窓おさまりで熱解析をかけた結果です(外気温0℃、室温20℃で解析を行っており、青い線は10℃の位置、赤い線は13度の位置を示しています)。外気温0℃であっても、室温20℃の際に窓周りの表面温度は15℃を優に超えている事がこの解析から分かります。ドイツの最高スペックの窓(いわゆるパッシブハウス用窓)であれば、サッシ枠の表面温度は17~18℃といったところでしょうか。しかしあちらは冬の外気温がー10℃ですので、室内の輻射の状況としてはほとんど変わらない可能性が高いですね。地球環境のため、そして住まい手の住環境のために、良い窓を選択する決断をされた実務者の皆様は、どうぞその良い窓が最大効果を発揮できるよう、取り付け方も十分検討されることを強くお勧めいたします・・。
今回の物件でも基礎外断熱を採用していますが、立ち上がり部分には防蟻処理されたスタイロフォームを採用するだけでなく、板金による物理的なバリア(蟻返し)を被せて白蟻から構造躯体を守っています。また外壁は構造に極力国産材を使用し、高断熱ながら水蒸気の動きを止めない(気密シートを使用しない)断面構成とすることで、長期的に躯体の健全性が保てるように配慮しています。下のシミュレーションは基礎の断熱をペリメーターで止めた場合(右)と全面敷き込みにした場合(左)の床下と土中温度の違いを表しています。GLから7メートル下の土壌を年間平均気温の12度で固定して解析をしていますが、基礎の断熱が欠けていると室温20℃でひたすら地盤を温めている事が分かります。土壌の熱伝導率は2.1W/mKとやや不利側で見ていますが、冬の悪天候による土壌の含水率を考慮すれば、決して大げさな解析モデルでは無いでしょう。
この度見学会を取りまとめてくださった、パッシブハウス・ジャパン北陸支部の上野住建様、及び現場の工事を止めて見学会にご協力いただいたカネタ建設様にこの場を借りてお礼申し上げます。
なお本物件ですが、完成後はモデル住宅として公開される予定となっておりますが、施工現場の見学に関しては個別対応は難しい状況ですので、ご理解頂きますよう、お願い申し上げます。
2015年
6月
01日
月
キーアーキテクツ設計の住宅物件で下水道が完備されていない地域のお施主様にお勧めしているエコロジーコロンブスという浄化槽のお話です。
この度初めて完了検査が必要な地域での導入を試みまして、お施主さんの協力の元、担当行政とかなり長い期間協議いたしましたが・・・・・、やっぱりダメですね。
水質調査結果を提出すれば検討すると一度は県の担当者から言われましたので、下記のような水質調査結果を取り寄せました。17年以上も前に北海道の住宅に導入されているエコロジーコロンブスの水質検査を行ったところ、気になる結果は、BOD1.2mg/L。17年前に行った水質検査ではBODは1.7mg/Lでしたので、以前よりも数値が改善されており、今日のブログのタイトルにありますように、多摩川以上、最上川以下な水質の、すなわち一級河川並に綺麗な水を浄化槽から放流されている(実際には地面に浸透させ、蒸発させています)という事が証明されました。
浄化槽法ですと確か合併浄化槽からはBOD20mg/L以下で放流すればOKという事なので、実際にはかなり汚い排水が川に流れ込むことになりますが、これは合法なので設置可能というのが行政の見解。
一方で電気を一切使わず、メンテフリーで汚泥も出てこないエコロジーコロンブスがなぜ設置不可かというと、”法に定義されていないから”だそうです。このような地盤浸透式の浄化槽は法律の定義が無く、結局のところ行政との論点は汚水が隣の敷地に流れ込んだらどうするのか?という所に集中しました。BOD1.2mg/Lの水が隣の敷地に流れ込んでも、問題無いのではないか、雨水よりも綺麗なのに?という反論をしても議論は平行線のまま、浄化槽をコンクリートの壁で囲めばOKというとんでもない指導まで入りました。それではシステムが破たんするのは誰にでもわかるのですが・・・。最終的に担当行政は”万が一の事が起こった場合に君たちは責任を取れるのか?”といった脅しのような姿勢となり、着工時期も迫っており、やや時間切れという事もあり採用を断念することになりました。
水質検査の結果を出せば検討するなど、安易に言わないで欲しかったですが、お蔭で私たちもこの浄化槽のすばらしさを数値で確認することが出来ました。
理に適っている物事が、もしも法の不整備で進められない時、法を変えていく働きかけを多方面からしていかなければならないと感じました。