2015年
8月
21日
金
つかの間のお盆休みが終わり、通常業務に戻ったのはまるで昨日の事のようですが・・。
本日はキーアーキテクツ設計の北陸のモデルハウスにて、気密測定に立ち会いました。
なんと、施工店手配で気密測定を担当された業者さんは、2年前にパッシブハウス・ジャパンの省エネ建築診断士セミナーを成績上位で合格されていたとのこと!
今回全く別のご縁でまたお会いできた事に正直小さな感動を覚えました・・・。
そして気密測定が始まります。
通常日本の住宅では気密性能をC値(隙間相当面積、単位はcm2/m2)
という単位で表しますが、大陸ヨーロッパ式ですと、
50パスカル加圧・減圧時の漏気回数(回/h)で性能を表示します。
ですので日本国内でもパッシブハウス・認定を狙う場合などは、この試験方法で漏気回数0.6回/h以下を証明しなければならないのですが、
今回は加圧法、減圧法共に0.38回/hという素晴らしい数字を出すことが出来ました!
実はこの気密性能、キーアーキテクツ設計物件の最高記録ではありません。
2009年に完成した鎌倉パッシブハウスでは、漏気回数0.1回/h、C値にして0.05cm2/m2という数値を出しています。この時の建物の構造は気密が取りやすいと言われている2x6、外壁と天井には気密シートを施工し、
ドレーキップの輸入木製サッシを使用していました。
一方、今回の北陸のモデルハウスは、一般的な軸組工法であり、外壁の気密シートがありません。窓も輸入品ではなく、国内の大手サッシメーカーの樹脂窓を使っています
(引き違い窓は今回ありませんでした)。
そのような状態で、地場の工務店さんによる丁寧な施工で、
0.38回/h(C値にして0.15cm2/m2) が出せたことには、
大きな意義があると思います。
建物の気密性能は建物のエネルギー効率や換気の能力に大きく影響する
とても大事な要素。
にも拘わらず、国の省エネ基準には、建物の気密性能に関する規定がありません。
したがって、大手ハウスメーカーで家を建てても、C値が5.0cm2/m2なんて事が
あり得る状況の中、未来の建て主の皆さんは、
工務店やハウスメーカーとの工事契約を決める前に、
必ず建物の気密性能に関するポリシーを確認するようにしてください!
一般の方でも、3~5万円の出費で気密測定を依頼する事が出来ますので、
施主手配で検査を行う覚悟があっても良いのではと思いますよ!
2015年
8月
06日
木
去る8月6日、富山県黒部市にて、キーアーキテクツ設計のモデル住宅の構造見学会を行いました。とても暑い夏日となりましたが、北陸エリアの実務者の方を中心とした、大変勉強熱心な皆様にお集まりいただきました。開口部に国内最高スペックの樹脂窓が取り付けられた物件は現在セルロースファイバーによる外断熱施工のために外壁下地をふかしているところです。この日までに屋根のセルロースファイバーブローイングが完了するハズだったのですが、行程の変更により無断熱状態で見学会開催となりました・・・。
樹脂窓は打合せ通りの位置と方法で躯体に収められていました。が、室内から玄関ドアの下の部分を見て私は悲鳴を上げそうになりました。なんじゃこのヒートブリッジは!!!
実は施工店さんが見学会の時に皆さんが出入りし易いようにとの配慮から昨夜モルタルで溝を埋めてくださったところだそうで、モルタルの乾燥過程で放熱していたのでした。ああびっくりした・・。
外壁に関しては、工場でパネル化されたネオマフォーム80mmが躯体に隙間なく充填されているため、現時点でかなり高い断熱性能を発揮しています。一方、灼熱の屋根にはブローイングの際に通気層を確保するための卵パックのようなシート(正式名称は日本住環境のルーフライナー)が収められていますが、そのシートが屋根合板に接触しているところだけ異常に高温になっているのが、サーモグラフィー画像でお分かり頂けます。急きょエアコンを設置していただき、窓を閉め切って見学会に挑むことになりましたが・・。
関係者の皆様のご協力の元、見学会の準備が整いました。キーアーキテクツからは図面や燃費計算結果(うちのイケメン新人の杉浦が社内で唯一省エネ建築診断士の資格を有するので、今回は彼の名前を入れてみました!)、施工写真のパネル展示、そして50分の1模型(自動車メーカーのエンジニアだったはずが何故か現在はプロのモデラーとして生計を立てている私の父に外注)を持参。お施主様からはパイプ椅子を貸出し頂いて、施工店の監督さんにはサッシおさまりを検討する際に製作した壁の原寸大模型をご用意頂きました。この時点ではエアコンがそこそこ効いており、室内は涼しい環境だったのですが・・・。
施工を担当されているカネタ建設・猪又社長のあいさつから始まり、賞味45分のミニセミナー&現場監督さんとのトークセッションでしたが、内部発熱量は3000Wを超え、室温は上がる上がる・・。皆さん本当に申し訳ありませんでした。是非竣工した暁にはもう一度、今度はもう少しゆっくりとお話させて頂きたいと思いますので、11月の竣工までしばしお待ちください!!!
こちらは今回の外壁構成と窓おさまりで熱解析をかけた結果です(外気温0℃、室温20℃で解析を行っており、青い線は10℃の位置、赤い線は13度の位置を示しています)。外気温0℃であっても、室温20℃の際に窓周りの表面温度は15℃を優に超えている事がこの解析から分かります。ドイツの最高スペックの窓(いわゆるパッシブハウス用窓)であれば、サッシ枠の表面温度は17~18℃といったところでしょうか。しかしあちらは冬の外気温がー10℃ですので、室内の輻射の状況としてはほとんど変わらない可能性が高いですね。地球環境のため、そして住まい手の住環境のために、良い窓を選択する決断をされた実務者の皆様は、どうぞその良い窓が最大効果を発揮できるよう、取り付け方も十分検討されることを強くお勧めいたします・・。
今回の物件でも基礎外断熱を採用していますが、立ち上がり部分には防蟻処理されたスタイロフォームを採用するだけでなく、板金による物理的なバリア(蟻返し)を被せて白蟻から構造躯体を守っています。また外壁は構造に極力国産材を使用し、高断熱ながら水蒸気の動きを止めない(気密シートを使用しない)断面構成とすることで、長期的に躯体の健全性が保てるように配慮しています。下のシミュレーションは基礎の断熱をペリメーターで止めた場合(右)と全面敷き込みにした場合(左)の床下と土中温度の違いを表しています。GLから7メートル下の土壌を年間平均気温の12度で固定して解析をしていますが、基礎の断熱が欠けていると室温20℃でひたすら地盤を温めている事が分かります。土壌の熱伝導率は2.1W/mKとやや不利側で見ていますが、冬の悪天候による土壌の含水率を考慮すれば、決して大げさな解析モデルでは無いでしょう。
この度見学会を取りまとめてくださった、パッシブハウス・ジャパン北陸支部の上野住建様、及び現場の工事を止めて見学会にご協力いただいたカネタ建設様にこの場を借りてお礼申し上げます。
なお本物件ですが、完成後はモデル住宅として公開される予定となっておりますが、施工現場の見学に関しては個別対応は難しい状況ですので、ご理解頂きますよう、お願い申し上げます。
2015年
8月
02日
日
こちら事件現場ではございません。
先日お邪魔しました秩父の高橋建築さんのお引渡し間近のお宅にて、畳の上に気持ちよさそうにごろりとしているお子ちゃまを激写・・。
この子はまだ知る由もありませんが、おそらく日本で初めて、木質ペレットのオーブンで焼いたお誕生日ケーキを口にする事になるでしょう!
こちらが噂のイタリア製ペレット調理給湯ストーブです。左側に32キロのペレットストレージタンク、中央が燃焼庫、右側がオーブンです。炎の強さは床暖房に使用する温水回路の水温設定で自動制御され、調理機能を選択した際は水温設定は上書きされ、ケーキが生焼けにならないようになっております。ほかにも給湯回路を有しているため、水道管を直結すればダイレクトにお湯を取ることも可能。
キッチン、廊下、そして脱衣室とトイレの床に温水が回っているのがサーモグラフィー画像によって確認できました。調理プレートの上も燃焼庫内並に温度が上がっているのが分かります。オーブン機能は選択していない状態のため、庫内の温度は100度までしか上がりませんでした。100度なら出来上がった料理の保温機能として十分重宝しそうですが・・。その日は34度越えの猛暑!現場では小屋裏のエアコンが一台で家じゅうを快適な温度に保っていました。1Fの壁から冷気が出て来るように工夫されており、流石です。が、それを打ち消すかのようにペレットストーブを1時間に渡って燃焼させ、着火後の温度上昇の記録を汗だくになって記録する私(激写されてしまった!)。余分に電気を使ってしまって申し訳ありません!ちなみにこのストーブ、メインスイッチが本体の扉の中に隠れており、鍵を持っている大人しかスイッチが入れられないようになっておりました。大切な事ですね。さて、お子様の誕生日は9月ということで、うーんちょっとまだペレットストーブは使いづらいシーズンです・・。クリスマスケーキではダメでしょうか?!