2016年
4月
30日
土
知り合いの庭師さんのご紹介で、葉山のPONNALETさんの展示会にお邪魔しました。なんと、建物は中村好文さんによるもの。オーナーさんはラオスやカンボジアで織られた草木染の布を使った帯や和装小物、ストールなどを手掛けられる江波戸さん(写真左上)。この場所で定期的に着付け教室も行っているそうです!こんな素敵な場所で、素敵な布たちに囲まれて、着物を着られるなんて、本当に贅沢ですね。
会場には真木テキスタイルスタジオの布も展示販売されており、カンボジアの草木染の布と真木さんの布が一つの半幅帯になるという、故郷を超えた女性たちの布のコラボに純粋に感動・・・。カンボジアでは長い内戦の影響で30代以上の男性が少ないそうで、女性が家計を支えているケースが多いとのこと。そこで伝統的な織物の技術を女性達に伝えるべく、日本の支援団体も活動しており、国内でフェアトレードの委託販売を行っています。私はこれまで、着物を着ることはmade in Japanの布をまとう事だと認識していましたが、このようにアジアの伝統的な織物を取り入れることによって途上国の女性の支援をする事も出来るなんて、素晴らしいと感じました。もちろん、ストールなどもありますので、和装で無くても支援出来ますけど・・。
和装の帯や着物でつくづく凄いと感じるのは、生地の産地で製品が分類されていること。洋服では絶対にありえない事だと思いませんか?!作り手までルーツの辿れる布をまとうって、今の時代、残念ながら贅沢品になってしまいましたね。
そして建築空間はファブリック無しでは決して完成しないことを、
改めて再認識した一日でした。
2016年
4月
23日
土
4月22-23日で開催された第20回国際パッシブハウス・カンファレンスにて、なんとファクター5の著者である、ヴァイツゼッカー(Ernst Ulrich von Weizsaecker)博士と直接お話する機会がありました。今年77歳になられる博士は、昨年末に休暇中に骨折されたとの事で、会場には松葉づえを付いてお越しになられました。しかし頭の方は全く衰えること無く、カンファレンス最終日のパネルディスカッションでは、ジャーナリストのフランツ・アルト(Franz Alt)氏の楽観的なコメントにはお構いなしで、鋭い指摘を連発されました。フォルクスワーゲン社による燃費偽装を例にあげ、資本主義の行きつく先はお金のためなら人を騙すという、倫理観の欠落した社会であると断言され、世界を戦争へと引きずり込もうとしている勢力に対して、怒りをあらわにされていました。
私は今回、ヴァイツゼッカー博士がカンファレンスに招待されている事を知り、ファクター5の日本語訳を持参していました。このファクター5の中でパッシブハウスが建築における高効率の道であると博士が述べていたことがきっかけで、当時日本語訳に着手された吉村さんが私に会いに鎌倉まで来てくださった事をお話すると、大変喜んでくださり、メッセージを下さいました(あれ、肝心な名前が無い!?)。
他にも博士は、今後アフリカの人口が爆発的に増えることが予想される中、世界中で水と土壌は汚染され、食糧の収穫量はこれまでよりも減ることを懸念され、各地で広がる貧困が社会の安定を乱すだろうと発言されました。
これに対してファイスト博士は、貧困社会では少女達の教育こそが、貧困脱却の鍵を握っており、これを急速に進めて行かなくてはいけない、資本主義社会のリーダー達は政治家も含め、もっと倫理観を持たなければいけないとコメントされました。
一方、ジャーナリストのフランツ・アルト氏は、これまで200年の間に、どれだけ世界が平和になったかを、10万人中何人が暴力によって不当に命を奪われたかという尺度で説明されました。その数字は過去200年で200分の1に圧縮されており、仮に先日のパリのテロで130人の命が奪われたとしても(それはもちろん悲惨な出来事であるけれども)、それがきっかけで第三次世界大戦に突入するなど、勘違いも甚だしいと牽制されました。
そんな訳で、カンファレンスを締めくくるパネルディスカッションにおいて、
パッシブハウスがどうのという議論は全く無く(笑)、皆世界平和のためにそれぞれのプロフェッションで全力で情報発信をしていく事に関して、同意を得た、そんな場となりました。
改めて、ヨーロッパ人の強い責任感と行動力に、脱帽です。
2016年
4月
11日
月
キーアーキテクツで基本設計のお手伝いをさせて頂いた、近江八幡のH邸、無事に完成いたしました!玄関に入るとそこにはビルトインされたペレットストーブが・・。
実はこれ、鎌倉のキーアーキテクツとパッシブハウスジャパンの事務所の1Fに2年前に試験導入したイタリア製のペレットストーブの新型です。鎌倉では1Fのストーブで木質ペレットを燃焼させて、2Fの温水床暖房及び給湯回路のバックアップを行っています。今回このストーブを日本国内で初めて、一般のお施主さんの住宅に導入して頂きました。関西エリアでの温水暖房(密閉)回路の施工という事で、今回は東北からエキスパートの方に指導に来て頂き、太陽熱温水器や床下放熱器との接続のサポートをして頂きました。何よりも、実用としては日本初となる、この超エコ給湯&暖房システムに投資して下さったお施主さんの意識の高さと勇気、そして施工に取り組んでくださった夏見工務店の熱意に感謝です。
南から45度振れているという、パッシブデザインの難易度が高い敷地で、年間暖房負荷30kWh/m2を狙って断熱性能を逆算したり、開口部のデザインを行いました。積雪も多いこの地域では、車はやはり2台必須という事で、屋根付きのカーポートを設けました。今回設置されたペレットストーブにはウィークリータイマーが付いているため、例えば”月~金は17時に着火、21時に消火”といった制御が可能です。仕事を終えて家に入った時、綺麗な炎を見てホッとして欲しいな、という想いで、ストーブは玄関設置となりました。
カーポートの上はダイニングに続くウッドデッキ。こちらに真空管型太陽熱温水器(寺田鉄工所製)が設置されました。このパネルとセットになっている給湯タンクに、ペレットストーブからの温水回路を接続しました。夏に長期家を空けられる際、タンクのお湯が沸騰してしまうと水道水を少し無駄に消費してしまうので、覆いをかけられるよう、あえて屋根にパネルを設置しませんでした。これなら雪も簡単に落とせますね。更に冬場に集熱パネルの効率が落ちたとしても、ペレットストーブから送られる温水の熱ははまず最初に給湯タンクに放熱され、その戻り回路が1Fの床下放熱器に回るという仕組みになっているため、冬場に湯切れが起きることはまず無いでしょう。ここから先はある程度住まい手さんにチューニングを委ねていきたいと思いますが、無事にシステムが組み上がり、ひとまず安堵しております。
もしも皆さんが、ノークレームでコスパが最大の住宅設備が欲しいなら、やはり大手メーカーの一般的なものから選ばざるを得ません。でもそうすると、再生可能エネルギーを最大効率で使う事は現状では難しく、ガスと電気の二択になってしまうし、電気に関しては電力会社を選ぶ事もままならなかったり。間接的に、原子力を容認してしまうかもしれません。私達を家づくりのパートナーとして選んでくれたお施主さんは、そもそも大手ハウスメーカーの家に満足せずに、より地球と家族に優しい家をフルオーダーで作ろうと決心してくださいました。その思想を尊重して、デザインや躯体性能だけでなく、住宅設備も私達は毎回フルオーダーで設計していきます。一生に一度の事ですので、是非皆さんも悩みぬいてください(笑)!
2016年
4月
08日
金
去る3月12日に前沢パッシブハウスにて、新建新聞社の三浦社長、伊礼智さんとの鼎談企画を行いました。喋らせると話が止まらない伊礼さんと私を、必死で抑制して流れを作っていく三浦さん、というかなり大変な2時間半だったと思われますが、その内容は今月発売の新建ハウジングプラスワンに掲載されておりますので、是非ご覧ください。書面の制約上、対談のごく一部しかご紹介出来なくて残念ではありますが・・・。